舞城さん、恐るべしです。
読んでよかった!!出会えてよかった!
舞城 王太郎
煙か土か食い物

腕利きの救命外科医・奈津川四郎が故郷・福井の地に降り立った瞬間、血と暴力の神話が渦巻く凄絶な血族物語が幕を開ける。前人未到のミステリーノワールを圧倒的文圧で描ききった新世紀初のメフィスト賞/第19回受賞作。 <アマゾン抜粋>


文圧・・・なるほどね。すごい言葉ですね。確かに文圧を感じました。

でも、やっぱりそれだけじゃなくて、この話の根底にあるものに強く圧されたような気がします。

他の作品を読んでも思うのですが、この人の突き抜けた感じが好きですね。文の強引さもキャラの素直さも凄く魅かれるんです。引力があります。


このお話は、ミステリーではなく、家族の物語。

4男四郎が主人公。でもこれは奈津川家を巡る家族の軌跡。


兎に角四郎が男前。そして奈津川家の全ての兄弟が男前です。“ERの申し子”四郎が非難しながらも認める兄弟がかっこ良く無いわけがないっ。

暴力と愛情に塗れたこの家族。

実は私はどこにでもある家族の形だと思います。手を出すか出さないか、の差。そのくらい普遍的なものを描いている。決して特殊な例じゃない。家族を憎み、蔑み、見下す、でも尚愛さずにはいられない。その描き方が見事でした。私も四郎と一緒の感情を抱いていたと気付かされました。

この特殊でスピード感のある文章に翻弄されて、とても新進気鋭な印象を受けますが、私はすごく一本気な精神が見えるんです。奇を衒っているのは文章だけ。芯の部分はとてもピュア。

読んだ後に、ほろりとさせます。凄いぞ、舞城ーーー。

長男一郎との激しい喧嘩も良いし、三郎との病院を仲良く抜け出すシーンも良いし、家族を助ける最後も良い。四郎が居てくれてよかったと、私は思わず胸をなでおろしました。

きっとこの4兄弟は、ずっと派手な喧嘩をしながらも、身体のどこか、心のどこかで繋がっていくことでしょう。血というのはきっとそういうものなんでしょう。身近にあるのに、なんと不可思議な存在なのでしょう!


また、こういう作品にありがちな、型にはまった女性が出てこなかったのも、良かったと思いますね。うさぎちゃん、密かに気に入ってます(笑)。実際に居たらムカツクだろうけどね~。