書評を書かずに映画の感想、ってね♪ふふ。
角川エンタテインメント
王の男 スタンダード・エディション
韓国で史上最悪の暴君と語り継がれる王・ヨンサングンに気に入られた旅芸人が、愛と嫉妬の渦に巻き込まれていく王朝ロマン。王と妾を皮肉った芝居を演じたチャンセンとコンギルは、王の目前で芸を披露することに…。

良かったです。ビックリするくらいに。
もっとアンダーグラウンドな感じかと思ったんですが、同性愛がタブーとされるお国柄を知ると、意欲作だと感心します。
旅芸人のチャンセンとコンギル。チャンセンは相手の芸を何でもコピーしてしまう才能の持ち主。コンギルは美貌を活かして女形をしている。王と側室ノクスの享楽ぶりを揶揄した芝居をし、大盛況となるが、王の側近に知れて捕まってしまう。王を笑わせられたら侮辱ではない、とチャンセンが主張し、王の前で演じた。王は大いに気に入り、その旅芸人を王宮に住まわせる。コンギルは王の寝所で芸を披露するうち、王の寵愛を受けるようになるのだが。

チャンセンがいい男。度胸があり、信念を曲げない。コンギルを弟のように気遣うものの、恋愛感情は無いようだ。そこのあたりは、かなり曖昧で、コンギルも王と寝ているシーンは無い。ただ、母親を幼い頃になくした王への同情が愛情に変わる様は、コンギルの行動から窺い知る事が出来る。王とチャンセンとコンギルの想いが絶妙な具合に入り混じっている。登場人物が皆いい味出してて、誰が悪者って訳じゃないの。愛妾ノクスの嫉妬から罠にはめられるんだけど、このノクスも何故か憎めない。そして、先帝の父親の善政にコンプレックスを抱き、悪政に走る、王のヘタレ具合は、物悲しい。

王の凋落が緩やかに進んでいって、最後は革命で幕を閉じる。展開もそれぞれの感情も無理が無く、引き込まれていく。最後の場面のチョンセンとコンギルの芸は、軽やかで、空まで飛んでいってしまうんじゃないか、と思った。愛に縛られながらも、自由に生きたいとする渇望を、これほどまでに上手く表現するなんて、凄い。

いい映画を観たなぁ、と見終わった後に思えた。